外して机の上に置いていた指輪をごみと一緒に捨ててしまう、ピアスや指輪を洗面所のシンクにうっかり流してしまう。誰もがこんな経験をしたことがあるはずだ。大体においてそのようにして紛失するのは、思い出がたくさん詰まったものや高価なもの。20日付のニューヨークタイムズが、失くした結婚指輪が持ち主に戻るまでのハートウォーミングなエピソードを紹介している。

非営利団体ブロンクスワークスの会議で進行役を務めていたモリー・ペンさんは、思わぬ出来事に見舞われた。使っていたペンが突然破裂し、黒いインクが手いっぱいに飛び散ったのだ。あわてて部屋の後方にあったごみ箱の近くへ行き、紙タオルで手を拭いて捨てた。その時、彼女は母の形見を作り直した大切な結婚指輪まで一緒にごみの中へ落としてしまっていたことに気が付かなかった。
家宝のサファイアとダイアモンドの指輪
指輪は中央にサファイア、周囲にダイヤモンドが配されたもので、価値は7700ドル。指にないと気づいた時の衝撃は大きかったはずだが、夫は「じゃあ、もう結婚してないってことだね」と冗談を言い、モリーさんは「あ、そんなに簡単に逃げられないわよ」と応えた。ユーモアで支えてくれた夫について、後に彼女は「とても理解を示してくれた」と語っている。
ニューヨークでは、些細な物が驚くほど簡単に消えてしまう一方で、結局は見つかることが多い。アパートの管理人たちは、排水口から指輪やブレスレットを釣り上げる話をするが、多くの場合、シンクの下にある曲がりくねったパイプが役立っている。そこが装飾品を引っ止めてくれるため、それらが分岐管や建物のメイン排水管、さらには下水管へと流れていくのを防いでくれるのだ。また、航空機の乗客たちは、空港のセキュリティーチェックを通過したばかりの荷物受け取り場で手荷物を回収する際、鍵や財布を取り忘れることがよくある。しかしその後、遺失物係から連絡が来ることも少なくない。
見つけ出したのはガーナ移民の元鉱夫
その夜、救いの手を差し伸べたのが、建物で最後まで勤務していたポーターのオボア・クワクさんだった。上司から「必ず見つけなきゃいけない」と連絡を受けた彼は、既に運び出されていたごみ袋を外で一つ一つ開け始めた。食べ残しや紙くず、こぼれたコーヒーにまみれた袋の中から探し出す作業は、決して楽ではない。それでも2024年にガーナから来米したクワクさんは、故郷で鉱山の仕事をしていた経験から「本物の金は見れば分かる」と語り、執念深く探し続けた。
その建物「ジャクソン・アベニュー・ファミリー・レジデンス」では毎日大量のごみが出るという。約95世帯、300人が住んでいる。ポーターとして働き始めて1年半の間、クワクさんがごみを漁るように指示されたのは今回が初めてだった。
NYに息づく誠実さと温かさ
やがてクワクさんは、その指輪を見つけ出した。高価な品だっただけに、黙って持ち去ることもできたかもしれない。それでも彼は迷わず上司に渡し、指輪は金庫で保管された後、無事に持ち主のもとへ戻った。モリーさんは感謝を込めてブラウニーを贈り、職場からもクワクさんに100ドルのギフトカードと新しい制服が渡された。
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