連載425 山田順の「週刊:未来地図」金融緩和の限界「コロナバブル」は必ず崩壊する(中)

コロナ禍が金融バブル崩壊を救った

 じつは、コロナ禍がなければ、すでにバブルは崩壊していたはずである。

 2019年末までで世界中で株価は十分に高くなり、この適温状況がいつまで続くかという状況だった。つまり、株高による金融バブルは崩壊寸前だったのである。コロナ禍以前に、このメルマガで何度か、「もう適温相場は続かない」と述べてきたが、それは、著名な投資家たちがみな同じような見解だったからである。

 金融バブルの崩壊は、目前に迫っていた。だから、2020年月、コロナショックが起こったとき、NYダウは大暴落した。サーキットブレーカー(取引停止)が何度も作動した。しかし、その後、政府が救済策を発表すると反騰し、いつのまにか暴落前の水準を回復してしまった。ナスダックにいたっては市場最高値をつけた。

 日経平均もDAX(ドイツ株価指数)もFTSE100(英国株価指数)も、ほぼ同じ動きをしてきた。香港、上海の中国市場も同じだ。

 この動きに「市場はコロナを楽観視している」などと言うアナリストがいたが、頭がおかしくなったとしか思えない。まして、いままでと同じような経済原則で市場を語るエコノミストにいたっては、完全に化石化したと言うほかない。

 たとえば、日本では一律10万円の特別定額給付金をもらった「困っていない人々」が株を買った。年金受給者でも給付金をもらえるのだから、私の周囲にもそういう人間が出現した。さらに、個人事業主や事業者への補助金、助成金、無利子無担保融資なども、株式市場につぎ込まれた。

給付金で株を買う「ロビンフッド」現象

 アメリカでも欧州でも、政府が供給したヘリコプターマネーが、株式市場に向かった。

 とくにアメリカでは、それまで投資経験のない個人投資家が、政府からの給付金をNYダウやナスダックにつぎ込む現象が起こった。

 この現象は、人気投資アプリ「Robinhood」(ロビンフッド)から「ロビンフッド現象」と名づけられた。ロビンフッドは、売買手数料が無料、単位未満株を1ドルからでも投資できるため、ミレニアル世代が飛びついた。その結果、ユーザーはなんと1300万人にまで拡大した。

 ロビンフッドのVC市場での企業評価はうなぎ上りとなり、8月半ばには112億ドルをつけた。IPO前に評価額10億ドルをつける企業のことを、「ユニコーン」(一角獣)と呼んできたが、ロビンフッドはその10倍以上を記録したため、「デカコーン」(十角獣)と呼ばれた。

 もちろん、本来の投資家、機関投資家、投資銀行、ヘッジファンドなども資金を株式市場につぎ込んだ。個別銘柄では、「コロナ対応」が重視され、テレワークで利益が急拡大したズーム、ステイホームでオンラインショッピングが急増したアマゾン、そのほか、半導体関連やネット関連企業の株価は暴騰した。GAFA株が市場を牽引した。それに伴い、政府の経済対策で救済されると判明した企業の古株もリバウンド狙いで急騰した。

 こうして、株式市場は主役を代えながら上昇を続け、コロナショックは吹き飛んでしまった。しかし、景気が元の水準に戻ったわけではない。

 つまり、バブル崩壊は先送りされたにすぎないのだ。

バブル崩壊を次のバブルをつくって防ぐ

 今回のコロナバブルは、政府と中央銀行が金融バブルの崩壊を防ぐために、コロナショックをきっかけに市場を救済したことによって生まれた。バブル崩壊を次のバブルをつくり出すことで防いだのだ。

 それでは、その前のバブル、適温相場を続けてきた金融バブルはいつ始まったのか?

 それは、リーマンショク後の2009年からである。NYダウは2009年以降約11年間上昇を続けてきた。債券も不動産もバブル化し、「金融バブル」「国債バブル」と呼ばれてきた。じつはこのバブルも、2008年のリーマンショックによる世界的な金融バブル崩壊の救済措置のために行われた大規模な金融緩和から生まれたのである。

 当時のオバマ政権は、「ベイルイン」(bail-in)だけでは救済不可能と判断し、公的資金をつぎ込む「ベイルアウト」(bail-out)政策に乗り出した。FRBは「保証付きの住宅ローン担保証券」(MBS)まで買い込み、金融崩壊を防いだ。

 こうしてリーマンショックは「100年に1度の危機」と言われたのに、その後、株価も債券も上昇した。欧州中央銀行(ECB)も大規模緩和に乗り出し、危機は去った。

 日本ではアベノミクスの異次元緩和が始まり、株価は再び上昇に転じた。

 今回のコロナショックでも同じことが行われたわけである。FRBも日銀もECBも、政府の要望に応えてマネーを提供した。そのため、中央銀行のバランスシートは大幅に痛み、いまもリスクは膨らみ続けている。

(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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