連載743  ウクライナ戦争を読み解く(1) 一般メディアはなぜか無視、ウクライナ戦争の黒幕、闇組織の実態(下)

連載743  ウクライナ戦争を読み解く(1)
一般メディアはなぜか無視、ウクライナ戦争の黒幕、闇組織の実態(下)

(この記事の初出は3月15日)

 

ロシアも続々、民間の傭兵部隊を投入

 ウクライナ側に義勇兵や傭兵がいるように、ロシア側にも同じような兵士たちが存在する。
 「ウォールストリート・ジャーナル」は、3月7日、複数の米政府当局者の話として、ロシア政府が市街戦の経験が豊富なシリア人の傭兵を募集していることを伝えた。
 また、ロンドンのパン・アラブ系メディア「アラビー・ジャディード」は、3月8日、ロシアの民間軍事会社「ワグナー・グループ」(Wagner Group)と民兵組織「ダーイシュ・ハンター」(Da’esh Hunter)の戦闘員の多数がシリアからウクライナに転戦したと伝えた。
 ワグナー・グループはロシアの民間軍事会社で、これまで、傭兵部隊を組織して、ロシアが介入した多くの紛争、戦争で成果を上げてきた。2014年のクリミア危機、その後のシリア内戦、リビア内戦、最近では中央アフリカやマリでの活動が報道されている。この傭兵会社を運営していると言われているのは、「プーチンの料理人」(Putin’s chef)と呼ばれるくらいプーチンと親しいエブゲニー・プリゴジンで、表向きはコンサルティング会社の経営者である。彼はロシアの大富豪(オリガルヒ)の1人で、今回の経済制裁により、海外資産はすべて凍結された。
 ワグナー・グループは、侵攻直後から400名以上の傭兵部隊をキエフに投入しており、プーチン大統領は彼らにゼレンスキー大統領の暗殺を命じたと言われている。
 「ダーイシュ・ハンター」は、2017年にロシア軍とワグナー・グループの監督のもとに結成された傭兵組織で、兵員数は約1500人という。そのほとんどがロシア人だが、一部はシリア人で、アル・カイーダ出身者も含まれているという。ロシアの「スプートニク通信」が伝えるところでは、ダーイシュ・ハンターの約450人が、トルコを経由してすでにウクライナ入りしている。
 ちなみに、ウクライナに派遣されるシリア人傭兵の報酬は、月1200~1500ドルだという。

アメリカを代表する民間軍事会社2社

 ロシアが民間の傭兵を通して、世界各地の紛争、戦争に介入してきたように、アメリカもまた同じことを行なってきた。民間の傭兵組織に関しては、むしろ、アメリカのほうが強大だ。傭兵を擁する民間軍事会社は「PMC」(private military company)と呼ばれ、 冷戦終結後に対テロ戦争が活発化すると、急成長した。
 もっとも有名なのは、元米軍人のエリック・プリンスが設立した「ブラックウォーター」(Blackwater)だろう。ここには、「シールズ」(SEALS :海軍特殊部隊)を除隊した元軍人たちが集まっている。
 このブラックウォーターと姉妹関係にあるのが、「グレイストーン」(Greystone)というPMCだ。
 この2社は、アメリカを代表するPMCで、ブラックウォーターは主に合衆国政府からの仕事を請け負うのに対して、グレイストーンは主に外国政府から仕事を請け負っているという。
 現在、アメリカのPMCがどのようにウクライナ戦争に介入しているのか、確かな情報はない。ただ、ウクライナ軍とウクライナの軍事作戦に関して、なんらかのかたちで絡んでいるのは間違いないだろう。
 一説によると、キエフを離れないゼレンスキー大統領は、アメリカの特殊部隊出身のPMC傭兵が守っているという。

(つづく)

 

この続きは4月11日(月)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 


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