
数あるニューヨークのベーグルの中で、あえて「断面」を見せた新スタイルで注目を集める「アポロベーグル(Apollo Bagels)」。ウエストビレッジにある新店舗では、オープンからたった4カ月しか経っていないにもかかわらず、人気のあまり立ち退き騒ぎにまで発展したんだとか。話題の店に足を運んでみた。

◆ もはや「ベーグル」ではない? 新感覚だらけ
もともとはウィリアムズバーグでポップアップショップとしてスタートした「アポロベーグル」。ウィリアムズバーグにあるレストラン「Leo」のオーナー、ジョーイ・スカラブリノさんがコロナ禍での損失を取り戻そうと始めた事業で、2024年3月に第1号店をイーストビレッジにオープン。続いて8月にウエストビレッジに2号店を構えた。

ニューヨークのベーグルといえば、生地、食べ方と選択肢が多いのが特徴だが、同店のベーグルは「トースト一択」で、ベーグルの種類は塩気のあるサワー生地から作られたプレーン、エブリシング、セサミの3種類のみ。トッピングの種類もサーモンやトマトといった基本の食材しか置いていない。そして提供スタイルは街中ではあまり見かけない断面を見せた「ビジュ推し」で、見た目はベーグルというよりピザに近いくらいだ。
◆ 気になる「サワー生地」、味は
筆者も食べてみたが、まずサワー生地のベーグルに巡り合うこと自体が珍しいので、新感覚。やみつきという表現以外で形容できない生地の完成度なので、そりゃトッピングに何をのせても「間違いないわ」というのが感想。従来のベーグルと違って、視覚的にサーモンなどのトッピングを捉えながら食べ進めることができるので、これまでのベーグル“エクスペリエンス”にはない食体験で、「もう普通のベーグルには戻れないかも」とも感じた。

ニューヨーク・タイムズでも「ベーグルと言えるのか?」とレビューが掲載されているが、その後には「新しいスタイルのベーグル」と紹介されており、各種SNSでも「サワー生地が優勝してる」「ここは普通のベーグル店じゃない」と口コミが相次ぎ、新しいもの好きのニューヨーカーの間ではトレンドの1つとなっている。
◆ 列が長すぎて「立ち退き」を迫られるも・・・
そしてそんな人気っぷりは、近隣エリアにも影響を及ぼすようになり・・・。ニューヨーク・ポストによると、8月にオープンしたばかりのウエストビレッジの店舗では行列が長すぎるあまり、「隣の店舗の入り口を完全にふさいでいる」と、建物の所有者が同店に対し「立ち退き」を迫ったという。
内容は11月末までに列が解消できなければ賃貸契約を解除するといったものだったが、それを受けたスカラブリノさんは、立ち退きを阻止する訴訟を起こした。 裁判の行方は明らかになっていないが、筆者が12月6日に店を訪れた際には、看板、列の誘導ベルト、そして店舗スタッフが常に客の列を整理するという厳戒態勢が敷かれていた。

今後の動向は気になるところだが、この冬にはウィリアムズバーグ、そして春にはジャージーシティーの新店オープンも控えているというので、立ち退き騒動に屈している暇はなさそうだ。やはり、ニューヨークでの話題性を持った店やモノの勢いの凄さというのはハンパではない。
取材・文・写真/ナガタミユ
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