慣れないアメリカ生活もあっという間に数年が過ぎ、気がつけば本帰国を迎える……というご家族も多いのではないでしょうか。いざ帰国となると、やはり心配なのが子どもの教育について。
渡米する際は幼かった子どもたちが、小学生、中学生となって帰国するにあたり、いろいろと決めなければいけないことも増えてきます。今回は2回のアメリカ駐在で3人のお子さんをお持ちの松谷麻子さんに、本帰国後の子どもの教育についてお話しを伺いました。

アメリカ駐在ライフアドバイザー
松谷あさこ
2回のアメリカ駐在とアメリカで3人の子育てを経験してきたからこそ伝えられる渡米準備や駐在生活について講座を行なっています。インスタグラムでは渡米に向けたアメリカ生活情報について発信しています。
Instagram : @asako__ny/
本帰国が決まった親御さんに向けて、まず初めに…
まずは、駐在という大きなミッションを終え、無事に本帰国を迎えたこと、本当にお疲れさまでした。海外生活は日本にいるよりも生活全般で負荷がかかります。子どもの教育に関して親が関わりながら支え続けて来られたことに心から敬意を表したいと思います。私は教育アドバイザーといった立場ではありませんが、自身の経験や多くの駐在家族との交流を通して感じたことが、どなたかの参考になれば幸いです。
私自身、2回の駐在経験があります。1回目は2歳と0歳の子どもを連れて渡米し、4年半を経て7歳と5歳で本帰国しました。1回目は、中1、小5、4歳の子どもを伴う駐在でした。これらの経験から、子どもが年齢を重ねるにつれ、教育面での親のサポートがますます重要になると感じています。
特に帰国後は、子どもが駐在期間中に習得した英語と日本語のバランスが、それぞれ異なるため、個別に対応する必要があります。先輩家族の体験談やアドバイスを聞く機会も多いと思いますが、全てが自分の子どもに当てはまるわけではありません。さらに帰国子女受験を取り巻く環境は毎年変化しているため、常に最新の情報を得ることが大切ですね。私たち親が抱きがちな「子どもたちには英語をツールとして活かせる日本人になってほしい」という願いは、ときに期待が大きくなりすぎたり、「帰国子女受験」の権利があることに固執したり、受験事情に振り回されたりしがちです。だからこそ、まずは親自身が心に余裕を持つことが重要です。冷静な判断を心がけながら子ども一人ひとりの特性や状況に合わせてサポートしていきましょう。

本帰国について、小学生編
小学生は語学の基礎が形成される大切な時期でもあり、学校で過ごす時間も長いため、現地校に通う子どもは特に駐在中から日本語にしっかり触れておくことは必要だと感じました。私の場合、補習校や日本人が経営する習い事など、家族以外の人ともできるだけ日本語を使う機会を作るよう努めました。(これはニューヨークだからできたことかもしれませんが…)
本帰国時、小学3年生だった息子は、私の感覚では英語より日本語の会話のほうが得意でした。文字は書けるし、ある程度の問題も解けていたので安心していましたが、日本の小学校への適応には予想以上に苦戦しました。学校での学習で使われる言葉や表現が難しく、事前に対応できる限界を超えたとき、壁にぶつかったのです。「先生の言っていることがわからない」という息子に、私は「お友達とおしゃべりできてるだけで偉いよ!」と前向きな気持ちで送り出すことを心がけました。英語優位のお子様の場合は、さらに学習サポートが必要となるかもしれません。ただ、小学生の時期は柔軟性が高く、挽回の可能性は十分にあります。焦らず長期的な視点を持ち、少しずつ課題をクリアしていけると良いですね。
私立の小学校は、生徒の受け入れ数など限りはあるものの、編入を受け入れている学校もあります。学校独自の方針が気になる人は調べてみられるといいと思います。
また、日本に本帰国後、好きな習い事をすぐに始められるのも良い方法です。これにより、新しい環境になじむきっかけを作れるだけでなく、子ども自身の楽しみや成長にもつながりますよね。
一方で、帰国後の課題として気になるのが、英語の保持です。現在はオンライン教材やレッスンが非常に充実しており、子どもが興味のあるものを自由に試すことができますよね。一つに絞らずに色々な選択肢を試してみるのが良いでしょう。「やる気が続かない」「すぐ飽きてしまう」と感じることもあるかもしれません。その時は、無理に続けさせようとせず、一旦やめる選択をするのも得策です。子どもの興味やペースを尊重しながら楽しく継続できる方法を見つけていきたいですね。
小学校高学年になると、お子様の英語のレベルがどれだけ上達しているのかを知るため、そして帰国子女入試に向けて、英検を受検する機会が増えますね。何のために、なぜ受けるのか、いつまでに、どの級を取りたいのか、目的を明確にして、早めに取り組むことをおすすめします。
在米中の日本語教育について
アメリカで子育てをする中で、日本語と英語を同時に学ぶお子様は多いです。また、たくさんの駐在のお子様を見て、語学の習得のスピードには個人差があると強く感じました。そこで、私の経験から得た考えをお伝えしてしたいと思います。お子様が語学の習得に時間がかかっていると感じる場合、その子のペースがゆっくりなだけかもしれません。重要なのは、子ども一人ひとりの性格や個性によって吸収のスピードが異なることを理解し、他人と比較しないことです。子どもたちは、英語と日本語という2つの言語を日常的に使い分けるという非常に高度なレベルでチャレンジしています。昨日よりも今日、今日よりも明日、間違いなく成長しています。語学をマスターすることは容易ではないと、私たち自身が一番よく理解しているはずです。
私自身、10年近くアメリカで生活する中で、子どもたちの成長に期待しすぎることもありました。しかし今改めて振り返ってみると、最も大切なのは、長期的な視点で子どもの成長を信じて応援する姿勢を持つことだと感じています。時には距離を置いて、手を緩めて、子どもたちが自らの力で成長するよう見守りたいですね。そうすることで、子どもたちは自信を持って挑戦していけるのではないでしょうか。
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