2026年4月16日 NEWS DAILY CONTENTS

NYで「朝ラーメン」を仕掛けるアメリカ人女性、4席の小さな店に人々が夢中になるワケ

ニューヨークで今、最も予約が取りにくいラーメン店とも言われている Ramen By Ra は、カウンターに4席だけの “朝ラーメン” に特化したレストラン。人々は人気アーティストのコンサートチケットを購入するかのごとく、予約解放のタイミングを狙い、毎回わずか数分で完売してしまう。

Ramen by Ra のオーナー
ラシーダ・パーディー(Rasheeda Purdie)さん

今回は、そんな人気店を手掛けるオーナーのラシーダ・パーディー(Rasheeda Purdie)さんにインタビュー。2025年11月にオープンしたばかりの同店のこと、そしてラーメン作りに込める思いを聞いた。「ラーメンをいつかニューヨークの定番料理に」。日本から海を渡ったラーメンが、ニューヨークで新たな文化として存在しようとしている。

ニューヨークと日本の「朝」から着想

Ramen By Ra はニューヨークのローワー・イースト・サイドに位置するレストランで、週に5回、朝9時から午後5時まで営業する。

チーズと長時間煮込んだ醤油ベースのスープも相性抜群(photo: Nat Meier)

メニューには、ベーコン・フライド・エッグ & チーズやエブリシングエッグ & ドロップなど、ニューヨークの朝食の定番であるベーグルやプレートから得たアイデアと、日本の朝ラーメン文化を掛け合わせたユニークなラーメンが並び、メニューの独自性と、ただの派手さだけでは終わらないクオリティーによって、根強いファンが増え続けている。

「ポップアップを経て、新しいロケーションでスタートして約5カ月が経ちましたが、ずっと来てくれている常連が5割、また新しい人たちが5割といった感じで、お客さんのバランスがとてもユニークなんです。また、お店が小さいこともあって、常連さんたちは近況を話し合い、新しく来た人も隣に座った人との会話を楽しめる。あえてこのサイズが、良いんです」

店内は4席のみ。自然と横にいる人との会話も生まれる

カウンターにはラシーダさんとパートナーの2人が立ち、ラシーダさんが中心となって調理、提供、洗い物までを一貫して行う。だしの香りで満たされた店内で、ラシーダさんが丁寧に注文の入ったラーメンを作り上げていき、その間もカウンターに座る人々とのコミュニケーションを忘れない。

「調子はどう?」「今週お誕生日でしょ?おめでとう!」「前にも来てくれてたよね? また会えてとてもうれしいわ」

お客さんや周りのコミュニティーへの心くばりを大切にするラシーダさん

「大好きなラーメンを自分で作り、友達に振る舞っていたのが始まりだったので、今の形になることは想像もしていなかったけれど、毎日すごくワクワクしているし、サポートしてくれているコミュニティーには日々感謝でいっぱいです」

ラーメン作りに惹かれる理由

そもそも同店がオープンするきっかけは、コロナ禍のロックダウンにあった。ファッション業界でトップスタイリストとして長年働いた後、コロナ禍の数年前に飲食業界に転身していたラシーダさん。当時、周辺のレストランが閉まり、ラーメンが食べられなくなったことをきっかけに自分で作り始め、最初に作ったのは、アメリカ南部の定番料理と組み合わせた「ポットリカー・ラーメン」だった。

ラーメン作りの魅力は「静けさ」と語るラシーダさん(photo: Clay Williams)

「燻製肉や骨を使ってじっくり煮込むポットリカーとラーメンが似ていることに気がつき、組み合わせてみたんです。すると、自分でもびっくりするくらいおいしくて、その時に『もっと学び続けよう』と思い、ラーメン文化やスープをより深く勉強し、友人や家族に振る舞い始めると、それが好評で『ポップアップをやってみたら』と言われるようになりました」

現店舗を構える前、バウリーマーケット(Bowery Market)でポップアップをしていた頃(photo: Rashida Zagon)

ラーメン作りのどこに惹かれたのか? ラシーダさんは、「静けさ」だと言う。「スープ作りは1時間、2時間、3時間かけてじっくり圧をかけていく、その丁寧さにすごく魅力を感じるようになり、心地良さを覚えるようになりました。その香りの中に1日中でもいられるんです。そこから、おいしいものにはこんなにも時間がかかっているのだということに、ありがたさや尊敬の念も感じるようになりました」

「ベーコン・フライド・エッグ & チーズ・ラーメン」、だしのコク深さにチーズや卵のまろやかさが絡み合う

そんなラーメン作りを通して、シェフとしての料理法だけでなく、自分自身にも変化があったといい、急いだり、急かされたりすることのない静けさを楽しみ、忍耐強さも身に付いた。「より自分に時間をかけられるようになり、新しい自分にも出会えました」

人々の滞店時間は「45分」

ラシーダさんの丁寧、そしてコミュニティーを重んじる人柄は、実際にレストランの要となっている。日本では「時間をかけずに食べられるから」と選ばれがちなラーメンだが、同店に足を運ぶ人は、1カ月前から予約を取り、わざわざ店を訪れる。「一日をとびきり良い日にしてくれる」人々はそんなラーメンを求めて、ローワーイーストにやって来る。

ラーメン店とは思えないような愛らしい内装。最近ではこの「窓」を使った持ち帰りサービスもスタートした

そして同店がユニークなのは、人々の滞店時間だ。日本では平均20分、長くても30分といったところだが、同店では“45分”という時間が設けられている。

「この45分というのは、日本で素早く食べられている時間と、ゆっくり食事をする傾向にあるアメリカのレストランの中間に当たるんです。45分あれば食事も楽しめて、会話も弾む。また、レストランも生産的に回すことができる、ちょうどいい時間なんです」

“ニューヨークラーメン”として日本上陸

調理法や提供スタイルだけでなく、ラーメンそのものの楽しみ方にも新たな化学反応を起こすラシーダさんのアイデア。そして、なんと今年の秋には日本でのポップアップを予定しているといい、日本から派生した文化が「ニューヨークラーメン」という形で逆輸入される。

1991年から続く、名誉あるジェームズ・ビアード財団のライジング・スター・シェフ賞(James Beard Award for Emerging Chef)で、ファイナリストにも選出された(photo: Nat Meier)

「私が作るラーメンは伝統的なものではなく、日本、そしてニューヨークから影響を受けていて、そのバランスが良い形で表れているものです。なので、このように紹介されるのはとても光栄なことだと思っています。『ニューヨークラーメン』を通して両方の文化への愛と情熱を示し、それを日本で提供できることは、きっと面白い経験になると思うのでとても楽しみにしています」

「また会えるのを楽しみにしているわ、素晴らしい一日を」

自宅でのラーメン作りからスタートし、今では4席の小さなレストランを起点に、独自のラーメン文化を発信していく。そして「いつかニューヨークの定番フードにしていきたい。ラーメン、そしてスープが好きなみんなの興味や愛を一つに集めながら、みんなにもっとワクワクしてもらえるように成長していきたい」とラシーダさんは意気込む。

日本で生まれた文化が海を渡り、海外の都市に根付くとき、それはただの食べ物ではなく「体験」として新たな価値を持ち始める。Ramen By Ra は、まさにその良い例だろう。ニューヨークラーメンが今後この街で、そして日本のラーメン文化にもどのような影響を与えていくのか目が離せない。

取材・文・写真/ナガタミユ
一部写真/Ramen By Ra 提供

Ramen By Ra

住所
70 E 1st St
営業時間
9:00-17:00(月・火曜定休)
毎月1日、15日の9:00から予約サイトRESYで予約可能
公式Webサイト
https://www.ramenbyra.com/
インスタグラム
@ramenbyra

                       
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