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海外で暮らしながら、日本での進学を見据える家庭にとって気になるのが、子どもの受験だ。「帰国生枠があるから大丈夫」という時代もあったが、状況は大きく変わりつつある。慶應義塾大学や早稲田大学に代表される帰国生入試の縮小・廃止は、その流れを象徴する出来事だ。この変化は大学入試にとどまらず、中学・高校受験にも波及し始めている。
いま問われているのは、英語力だけではない。海外での経験をどう捉え、どう言葉にし、どう将来につなげるかが重視される時代になっているのだ。
そんな中、早稲田アカデミー・ニューヨーク校は、「本気でやる子を育てる」との理念の下、受験をゴールとしない将来を見据えた教育を実践している。今回は、早稲田アカデミーのUSA取締役・ニューヨーク校代表の川村宏一先生に話を聞いた。

学校が帰国生に求めている力とは
学校側が何を求めているのかを知ることは、合格への近道だ。
帰国生入試において評価されるのは、単なる語学力ではない。海外での生活を通じて得た経験や、多様な価値観の中で育まれた視点が重要視されている。
ニューヨークで育つ子どもたちは、「みんな違ってみんないい」を地でいく環境の中で育っている。国籍も文化も違う友達と毎日接し、自分とは異なる価値観を受け入れている。
「そんな経験を持つ帰国生は、日本の学校において周りの子を刺激し、クラスを率いるリーダー的な役割が期待されます。少子化が進む中で、各校が独自の特色を打ち出していく必要性が高まっており、帰国生は、学校の『カラー』を形づくる存在として位置付けられていると感じます」
これまで数多くの帰国生の受験指導に携わってきた川村先生の言葉には、実感がにじむ。
早稲田アカデミーが大事にする通常授業とは
塾に入れば、志望校に合格するための“魔法の近道”を教えてくれるのでは、と考えがちだ。しかし同校が最も大切にしているのは、「1回1回の授業」だ。
その考え方は、「予習は必要ない」という言葉にも表れている。
「1回1回の授業が一番大事だと思っています。最初にどんな方法で勉強するのが良いか、といった部分は、塾でしっかりやりたいんです。理由は、正しい思考の“フォーム”を最初に身に付けることが重要だからです」
近年は予習を前提とした学習スタイルも増えているが、同校ではあえてそれを採らない。
「塾は“魚の釣り方”を教える場所です。どのように学習するのが良いか、その方法を塾で身に付けて、家庭学習で実践する。その方が効果的だと考えています」
重視するのは、「守破離」でいう「守」の段階だ。まずは教えられた型を忠実に守る「守」、そこから自分なりに工夫して発展させる「破」、そして最終的に型から離れ、自立していく「離」。
「最初は、教えられた通りに基本に忠実に学び、正しい勉強方法を身に付ける。この土台があるからこそ、その先の応用や発展につながっていきます」
「魔法の近道」ではなく、丁寧に積み上げる力。その重要性を、早稲田アカデミーの授業は示している。

受験はゴールではなく、通過点。
志望校は、「行ける学校」ではなく「行きたい学校」
早稲田アカデミーが一貫して強調するのは、「受験は通過点」という考え方だ。
「合格することを目的にするのではなく、その学校に入ってから何をするのかが重要です。受験は単なる通過点に過ぎません。そこで燃え尽きてほしくはないんです」
志望校選びも、「行ける学校」ではなく「行きたい学校」。塾にとって、合格実績は一つの成果であるにもかかわらず、「行きたい学校」を推すのは、その子の未来を見ているからこそ。
子どもたちが、自分で考え、選び、行動していく力を持つこと。その土台を作ることこそが、教育の本質だと同校は考える。
「本気でやる子」とは何か
「本気でやる子を育てる」 。これは、早稲田アカデミーが創業以来、50年以上にわたって大切にしてきた教育理念だ。
その意味を聞くと、単に努力できる子を指すわけではないと川村先生は語る。
塾で学ぶ意義は、もちろん算数や国語といった科目の力を身に付けることでもあるが、それ以上に重視しているのが、「頑張ればできる」という実感を持つことだという。
「大変な思いをしても、本気で取り組めば結果が出る。その成功体験を積み重ねていくことが大事なんです。いわば『勝ちグセ』を身に付けてほしい」
さらに、この理念にはもう一つの意味がある。「『本気でやる子を育てる』というのは、子どもだけでなく、私たち教師も『本気で向き合う』という意味なんです」。子どもたちの可能性は無限大であるという前提に立ち、「ここまでしかできない」という枠を教師も外すことが、子どもたちを変えていく。

小さな成功体験が子どもを変える
では、どうすれば「本気」のスイッチは入るのか。その具体例として川村先生が挙げたのが、漢字が苦手な生徒への指導だ。
「まずは目標を提示します。例えば、『漢字テストで毎回90点を取ろう』とか。
点数が取れなかったときに、『どういう勉強をしたのかな?』と聞くんです。何回書いたのか、意味を考えたのか。例えば『さんずいは、水の意味だよ』といったところから、理解を深めていきます」
そのうえで、次の目標を設定する。「いきなり100点を目指すのではなく、“次は60点”“次は75点”と、小さな階段を用意してあげるんです」
そして、その階段を一つ一つ登るたびに、しっかり認める。「できたね、と。約束した目標をクリアできたことを認めてあげると、子どもは次も頑張ろうと思えるんです」。こうした積み重ねによって、「頑張れば結果が出る」という実感が生まれる。一人一人に合った目標設定をして、成功体験を積み重ねることで「本気でやる子」が育つ。
子どもを伸ばすのは「気づく大人」の存在
こうした変化を支えるのが、大人の関わり方だ。「近くにいる大人が、変化に気づいてあげられるかどうかが大事です」。どんなに小さなことでも見逃さず、すぐに声をかける。
もちろん家庭での声がけは大切だが、毎日向き合う保護者だからこそ難しい場面もある。だからこそ、第三者の視点からの声がけが、子どもの背中を押すこともある。
やがて子ども自身の中に「自分はできる」という確かな軸ができていく。
それは受験のためだけの力ではなく、その先の人生を支えていく力だ。そして、その力は、ニューヨークという環境の中でさらに大きく育っていく。
受験はゴールではない。その先にある未来に向かって、本気でやる子を育てる──その教育が、ここにある。
▶次回は、ニューヨーク暮らしならではの悩みと強みについて聞きます。

早稲田アカデミーNY校 川村宏一(かわむら こういち)
早稲田アカデミーUSA取締役・NY校現地代表。2002年に早稲田アカデミーに入社後、校舎で7年間にわたり講師を務め、その後、高校受験部門にて英語科目の責任者を担当。現在の早稲アカ英語科システムの礎を築いた後、国際部に異動し、英語専門校舎の統括責任者に就任。2023年3月から現職。早稲田アカデミーの教育理念である「本気でやる子を育てる」を、海外においても実践している。
早稲田アカデミー・ニューヨーク校
Tel 914-698-1100
1600 Harrison Ave., Suite 103 Mamaroneck, NY 10543
https://www.waseda-ac.co.jp/abroad/school/newyork.html
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