米マイクロソフト共同創業者のビル・ゲイツ氏は、人工知能(AI)が雇用や人命に深刻な脅威をもたらすとして、対策を「世界の最優先課題」にすべきだと訴えた。8月26日付ニューヨークタイムズのインタビューで答えた。

ビル・ゲイツ氏(photo: European Union, 2026 https://en.wikipedia.org/wiki/Bill_Gates#/media/File:Bill_Gates_at_the_European_Commission_-_P067383-987995_(cropped)_5.jpg)

同氏は、「巨額の資金が動くテック業界は危険性を認識しながら、表立って語ることを避けている」と批判。同日、約6000語の論考を自身のウェブサイトで公表した。AIの進歩が予想を大幅に上回り、開発者の制御を離れる可能性や、生物兵器の製法を生み出す能力など、かつて慎重化の基準とされた節目も無視されていると指摘した。

大規模失業とバイオテロを懸念

ゲイツ氏が特に懸念するのは、大規模な失業とバイオテロだ。過去の技術革新は失われた以上の仕事を生んだが、AIは経済全体に広がるため、職を失った人を別の産業が吸収する余地は乏しいという。同氏は、企業が人間をAIに置き換える負担を増やし、失業者支援の財源を確保するためAIの計算単位「トークン」に課税する案を提示。また、介護のように人と人との関係が重要な職種や、転職が難しい人々の仕事は「ヒューマンリザーブド(Human Reserved)」としてAIによる代替を禁じるべきだとした。

さらに、高性能AIを使えば少人数でも新たな病原体を開発できる恐れがあるとして、兵器転用可能なAIシステムの審査を義務化し、監視・規制基準を定める国際協定を求めた。政府や業界が進める自主的な対策には不十分だとし、「最も危険な道具」を自主規制に委ねる考えを退けた。

発言の背後には、ゲイツ氏が今年、AIによるプログラミング能力に衝撃を受けたことにある。一方、自身の巨額の富や、マイクロソフト経営時代の独占的慣行を巡る過去から、警告役としては適任ではないとの見方も認めた。それでも、現在は企業経営の利益動機から離れた技術者として、世界の指導者との会談でAIの危険性を訴え続ける考えを示した。

どんな職種が脅かされているのか?

AIによる雇用代替は、金融、IT、メディア、翻訳、会計など、ニューヨークで日本人が従事する職種にも及ぶ可能性がある。また、介護を「ヒューマンリザーブド」の仕事として守る構想は、日系の高齢者向けサービスや日本語対応のホームケアにも関係する。