政治が腐敗すると米ロはそれにつけ込む
ウクライナはもともと破綻国家である。だから、力のバランスが崩れると悲劇が起こる。ウクライナの悲劇の原因を詳しく知りたければ、2016年に、オリバー・ストーン監督が制作したドキュメンタリー映画『ウクライナ・オン・ファイヤー』を観るべきだ。
2004年のオレンジ革命、2014年のマイダン革命、ヤヌコヴィッチ政権の転覆劇の真相を暴いている。
ウクライナで起こってきたことは、欧米メディアや日本の主流メディアが伝えるような「民主主義の悲劇」ではない。 この国では、腐敗した政権とロシアのオリガリヒのような財閥が結びつき、そうしたなかで、ネオナチや極右、親ロ勢力が暗躍し続けてきたからだ。
たとえば、ユダヤ人大富豪のイゴール・コロモイスキーは、ネオナチ軍団と評される「アゾフ大隊」に資金を流していた。また、ウクライナ発のロシェン菓子グループの経営者で「チョコレート・キング」と呼ばれる大富豪のペトロ・ポロシェンコは、ドネツクやルガンスクで独立運動を画策するテロリスト・グループに資金援助をしていた。
政治腐敗があると、それにつけ込むのが、アメリカやロシアの諜報機関で、その情報にのって、ワシントンやモスクワは、その国をコントロールしようとする。大国となった中国も、まったく同じだ。ウクライナはまさに、そういう大国につけ込まれやすい国である。
だから、プーチンは領土を獲りに行き、トランプは鉱物資源を奪おうとしている。
ブロック経済の先にあるトランプ・クラッシュ
それにしてもトランプの政治と外交は、デタラメかつ単純だ。世界を相手に「カネをもっと寄こせ」と言っているに過ぎない。それが、関税のふっかけであり、グリーンランドやパナマを寄こせ、カナダは51番目の州になれである。
こんなことをやっていれば、世界はブロックに分断される。経済もブロック経済になる。中ロ圏とか、EU圏、東南アジア圏、あるいはBRICS圏などだ。
これは、1929年の世界大恐慌以後の世界と同じである。このときもアメリカが高額関税を課したため、世界中で報復関税合戦が起こり、経済はますます落ち込んだ。
ブロック経済では、国同士の溝が深まる一方になる。また、誤解から紛争、戦争も起こりやすくなる。第2次大戦は、結局のところブロック経済が招いたとされる。
それを考えると、この先、世界経済が大きく落ち込む可能性が高い。株などの金融相場もどこかで値崩れするか、クラッシュするかもしれない。「トランプ・クラッシュ」がやって来るかもしれない。
「臥薪嘗胆」で耐えるほかにない日本
トランプとゼレンスキーの関係を修復させ、ウクライナ戦争を停戦に持ち込もうとEUは乗り出した。しかし、トランプのご機嫌をとって、ロシア有利な停戦を達成しても、それは将来に禍根を残すだけである。
というか、それを考えれば、ウクライナ戦争は今後もずっと続くだろう。
世界が分断、ブロック化される状況は、日本にとって非常にまずい状況である。これまでのように、いくらアメリカの属国とはいえ、全方位で生きていくことが不可能になるからだ。
日本はどうみても、アメリカ圏、アメリカ経済圏のなかに留まるしかないが、そのボスがトランプだけに、難癖をつけられる可能性が高い。
しかし、日本には安全保障の担保に差し出す資源もないうえ、財政は世界に類を見ない巨額赤字を積み上げていて身動き取れない。
したがって、戦略など立てようがなく、トランプ旋風が去るまでじっと待っておとなしくしている「臥薪嘗胆」しかない。
「50州で50の抗議デモを1日で行う」
トランプのあまりの“オレ様”ぶりに、ここにきて反対するデモの輪が広がりを見せるようになってきた。「ガーディアン」紙などによると、バーモント州ではJDヴァンス夫妻が来るというので、JDヴァンス反対デモが起こった。
デモ隊は「バーモントはウクライナを支持する」と「国際的な恥」と書かれたプラカードを掲げ、ウクライナ国旗を振った。そのため、JDヴァンス夫妻は旅行先を変更してしまったという。
トランプ抗議デモは、SNS上で拡散された「50501」というハッシュタグの呼び掛けが発端になったという。「50501」とは、「50州で50の抗議デモを1日で行う」という意味が込められていている。
はたして、このようなデモがいずれ、トランプを引き摺り下ろすことに繋がるのだろうか。中間選挙まであと2年、任期全うまであと4年。ひたすら耐えて、待つほかないのだろうか。
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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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