2025.04.15 COLUMN 山田順の「週刊 未来地図」

ついに「トランプ不況」に突入! 世界の株価はこのまま暴落に向かうのか?(上)

 アメリカでは、すでに「トランプ不況」(トランプリセッション)に入ったという見方が有力だ。NY株価は崩れたまま。物価高で、消費も振るわない。
 それなのにトランプは、間違いだらけの「関税」政策を続けている。今後、予定されているのは4月2日の「相互関税」と「自動車関税」。これが、どの程度になるかで、株価暴落もあり得る状況になってきた。
 世界中の投資家たちは手仕舞いに入った。いま強気なのは、トランプが来年の中間選挙でレイムダック化すると予想し、底値を狙う向きだけだ。

スーパー億万長者5人が純資産31兆円を失う

 先日のトランプ発言以来、NY株価は下落したまま低迷を続けている。そのトランプ発言というのは、「今年は景気が後退するか」という質問に対し「そういうことを予想するのは嫌いだ」としたうえで、「当然移行期間はある」と答えたことだ。
 これを、市場は「景気が後退しても関税政策は変えない」と受け取り、売りに走ったのだ。もはや、トランプの「MAGA」のメッキは剥げ落ちた。「なにをやるかわからない」という見立ては見当違いで、「なにをやっても間違いは絶対認めない」というのがトランプの本質だと、みな知ってしまった。 
 すでにトランプの関税発動により、アメリカのスーパービリオネア5人は合計2090億ドル(約31兆円)の純資産を失ったとブルームバーグは報道した。その5人というのは、イーロン・マスク ジェフ・ベソス、マーク・ザッカーバーグなどで、いずれもトランプの大統領就任式に出席している。

トランプトレードからトランプリセッションへ

3月5日にロイターは、市場環境の変化を次のように報道した。
「経済成長率や株価、AI分野の優位性が評価され、投資家の間でアメリカ例外主義が共有されてきたが、その環境はこのところ急変しており、アメリカから本格的に資金が逃げ出す一大転換点が到来しつつある」
 3月12日にJPモルガンが発表した経済予測では、「アメリカが今年リセッションに陥る確率は40%程度、相互関税が発動されればそのリスクは50%以上に上昇する」となっている。
 このような報道からわかるのは、市場のセンチメントが急速に悪化していることだ。「トランプトレード」が終わり、「トランプリセッション」に突入したのは確実だろう。
 3月18日発表のUCLAアンダーソン経営大学院の「経済予測レポート」のなかで、クレメント・ボール教授は、トランプ政権の経済政策がすべて実現すれば、「アメリカ経済は深刻な景気後退に陥りかねない」と警告している。

4月2日の「自動車関税」は見送りされるのか?

 トランプリセッションの先にあるのは、株価をはじめとする資産の暴落である。とくにNY株価の暴落が懸念されている。もちろん、トランプ関税はアメリカの景気ばかりか、世界中の景気に悪影響を与え、株価の世界同時暴落もあり得る。
 3月23日、ブルームバーグは、トランプ政権の当局者の話として、自動車関税の強化の正式発表は、当初予定の4月2日には行われないと報じた。しかし、トランプは朝令暮改の常習犯だから、信じるわけにはいかないと思っていたら、なんと、トランプ本人が25日に「数日以内に発表する」と断言した。いずれにせよ、実施されるのは間違いない。
 自動車関税の強化が発動されれば、日本は大きな影響を受ける。税率は現行の2.5%から10倍の25%になってしまう。となれば、アメリカを最大の輸出先とする日本の自動車産業のダメージは計り知れない。
 日本自動車工業会によると、日本は2023年に約144万台の乗用車をアメリカへ輸出している。その輸出台数は、全体の約3分の1である。
 自動車関税の強化と同時に導入するとされていた半導体や医薬品、木材に対する分野別の追加関税も、4月2日の発表は見送られたと報道されたが、こちらも、現時点では予定通りだろう。

この続きは4月22日(火)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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