ニューヨークで近年増えている新築コンドミニアムの中には、「高級」をうたって高額な家賃を設定しながら、実際には深刻な不具合を抱える“ぼったくり”物件が少なくない。地元ニュースサイトのゴッサミストが16日、レポートした。ブルックリンの「One Blue Slip」や、ブロンクスの「One38」、ブルックリンの「38 Sixth」などで起きているトラブルを紹介している。

「ごみ溜めのような家」
グリーンポイントのOne Blue Slip
ブルックリン・グリーンポイントの「One Blue Slip」では、天井から水が漏れたり、建物全体で断水が3日間続いたりしたという。住民らによると、秋には2階部分が浸水し、豪華なロビーにまで水が流れ込んだ。それにもかかわらず家賃は、ワンルームでも月の賃貸料が約3400ドル、3ベッドルームでは1万2400ドルを超えることもある。
「ホテルのような部屋に引っ越したのに、今ではごみ溜めのような家に帰ることになる」と不満をぶちまけるのは、2022年に入居した商業用不動産管理業者のジョーイ・ヘスさん。「今年はもう、あらゆるものが壊れ始め、住民の健康が脅かされる事態にまで至っている」
「被害訴えた住民に報復」
モットヘイヴンのOne38
2ベッドルームで月の賃貸料が4400ドルのブロンクス・モットヘイヴンの新築コンドミニアム「One38」では数カ月間、市の電力網ではなく、騒音の激しい移動式発電機で電力を賄っていたという。レンガのファサードは崩れかけ、水道水は茶色く濁り、天井からは雨漏りが。ジムや駐車場も浸水していた。住民たちは所有する不動産会社を提訴したが、逆提訴され、陰湿な嫌がらせと報復を受けた。
「ゴキブリだらけの“ぼったくり”」
バークレイズセンターの38 Sixth
バークレイズセンターからわずか数メートルの場所にあるブルックリンの「38 Sixth」は2017年オープンの新築アフォーダブルハウジング。2ベッドルームで月の賃貸料が2600ドルと比較的安価だが、市のデータによれば、過去2年間で入居者から1320件の苦情が寄せられ、漏水やゴキブリなどの問題により、住宅保全開発局(HPD)から100件以上の違反指摘を受けている。
原因は安価な資材や雑な工程に
ゴッサミストの分析では、2016年以降に開業した約1600棟の住宅のうち、約1割が1戸あたり少なくとも1件の住宅規則違反を抱えていた。これらの建物の違反件数は1戸平均2.1件で、市全体平均の0.8件を大きく上回る。暖房停止や害虫発生、エレベーター故障、茶色い水道水、雨漏りなど、生活の質に直結する問題も目立つ。
専門家は背景として、建設費の高騰、資材価格の上昇、人手不足、工期短縮への圧力を挙げる。開発業者は建設完了まで長期間融資の利息を負担するため、少しでも早く入居を始めて家賃収入を得たい事情がある。その結果、安価な資材の使用や工程の省略、細部の詰めの甘さにつながる可能性があるという。パンデミック以降の供給網の混乱も、銅配管やボイラーなどの資材の質と価格に影響を与えたとされる。市当局はこうした問題を重く見ており、HPDは新築物件の状況を調査中。さらに、テナント組合を作って住民が声を上げることが改善を促す有効な手段になり得るとアドバイスしている。
今月初め、ニューヨーク市のマムダニ市長は不動産管理業者に対し、入居者の組織化の権利を妨害してはならない旨を伝える書簡を発出。市長直属のテナント保護局のシーア・ウィーバー局長は、市長の「家賃ぼったくり」公聴会の目的の一つは、テナントの組織化をさらに促進することにあると述べている。
新築が大好きな日本人は要注意
「新築=安心・高品質」というイメージがあるが、実際にはこのように高額物件でも水漏れや断水など生活に直結するトラブルが起きているケースが少なからずある。日本人駐在員や留学生は、立地や見た目、設備の新しさを重視して物件を選びがちだが、それだけでは不十分だ。契約をする前には必ず過去の違反履歴や苦情件数、レビュー、管理会社の対応力を確認しておきたい。また、トラブル発生時に自ら声を上げる文化にも慣れておく必要もある。安心して生活するためには、情報収集力とリスク意識がこれまで以上に求められている。
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