ニューヨーク州のホークル知事は5月27日、2027年度成立予算の一環として、連邦政府による強引な移民取り締まりからニューヨーク州民を守るための包括的な一連の法律を発表、署名した。しかし、取り締まりを統括する国土安全保障省(DHS)の考えはこれと異なるようだ。ニューヨーク州とDHSの方針、現在の流れをまとめた。

ホークル知事の包括的な移民法
• 地元の法執行機関(この場合は警察など)が地域の犯罪対策に注力できるよう再編成する
• 法執行官(この場合は移民関税執行局/ICE)による覆面着用を禁止する。ただし、必要な装備、サングラス、または医療用マスクは顔面を覆うものの定義から除外する(※註参照)
• ニューヨーク州民が憲法上の権利の侵害を理由に、連邦、州および地方自治体の公務員を相手取って訴訟を提起できるようにする
• ニューヨーク州および地方の民間機関や公立学校の資源(職員の勤務時間を含む)を、ICEの活動に使用することを禁止する
• 移民の生徒が教育を受けられるよう保証し、在留資格のあるなしにかかわらず無償の公教育を受けられるよう定める。特に在留資格に関するデータの収集や開示など、在留資格のない生徒による権利の行使を阻害しかねないさまざまな慣行を禁止する
• 裁判官の署名入り令状なしに、住宅施設、公園、 保育施設、幼稚園、病院、学校、学生寮、医療施設、コミュニティーセンター、図書館、避難所なを捜索することを禁止する
※予算に関連する移民保護措置の大部分は、直ちに発効または遡及適用されるが、覆面使用の禁止規定については署名から30日後に発効。
ホークル知事は、これらの新法により、「地元の法執行機関はICEの業務を行うのではなく、地域社会の安全確保に専念できるようになる」とし、「連邦政府による権限の乱用からニューヨーク州民の憲法上の権利を守り、連邦捜査官に責任を問うことが可能になる」としている。
国土安全保障省のスタンス
5月29日付ニューヨークタイムズによると、ホークル知事が、覆面の着用禁止を含む新たな規制案を発表してから約1週間後、DHSの法務顧問は内部メモの中で当局者に対し、「公務の遂行中に州や地方自治体の覆面着用禁止令に従う法的義務はない」と保証。同紙が入手した同15日付のこのメモには、職員は「州による干渉や起訴を恐れることなく、与えられた職務を自由に行使すべきである」と付け加えられていた。この指針は、ミネアポリスでICEの手によりアメリカ人2人が死亡したことを受け、移民取締りを制限しようとする全米各地での立法の動きに対し、DHSが協力する意向を全く持っていないことを示唆している。
DHSは、ニューヨーク州のような覆面着用禁止措置を「卑劣であり、われわれの職員を危険にさらす露骨な試み」と非難。捜査官が覆面を着用するのは自己防衛のためであり、憲法の下では州や地方の政治家が「連邦法執行機関を支配することはできない」と主張している。
包括的移民法にも抜け穴が
多くの移民支援団体や一部の議員は、今回の法案では不十分だと指摘している。ICEと地元法執行機関との間の非公式な合意は禁止されているものの、例えば、国外退去の対象となり得る人物が関与した交通違反の取り締まりの後などにおいて、警察が移民当局に通報することを明確に禁じる条項は法律に存在しない。こうした通報を全面的に禁止する規則の制定に反対した知事は28日、単に相手がスペイン語を話しているという理由だけで、警察官が移民当局に通報すべきではないと述べた。
全米各州でNY州と同様の流れ加速
ミネソタ州で起きた2件の死亡事故に加え、ICEの収容下での死亡事例が増加しており、全米の各州が立法措置を講じるよう後押ししている。
カリフォルニア、コロラド、ワシントン、ウィスコンシン州は、住民が憲法違反を理由に州裁判所でICEを訴えることを認める法案を提出。現在、連邦政府職員には広範な免責特権が認められており、責任追及は事実上不可能となっている。カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は2025年9月、ICE職員の覆面着用禁止と、身分証明書の提示を義務付ける法案に署名。覆面着用禁止令は、連邦法執行機関と州法執行機関を異なる扱いとしたとして、憲法上の理由から連邦判事によって覆された。地方および連邦の職員双方に身分証明書の提示を義務付ける付随措置も最近、裁判所によって差し止められている。
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