連載759  ウクライナ戦争“最悪のシナリオ” 長引けばアメリカは覇権を失いドルは暴落する (完)

連載759  ウクライナ戦争“最悪のシナリオ” 長引けばアメリカは覇権を失いドルは暴落する (完)

(この記事の初出は3月29日)

 

軍を派遣しなければアメリカの負け

 アメリカのウクライナ政策、NATO拡大政策は明らかに失敗である。ネオコンはネオナチ勢力まで使ってウクライナの政権を転覆させ、ロシアを刺激し続けた。バイデン大統領にいたっては、「軍を派遣しない」とまで言ってしまった。これは、プーチン大統領に「ウクライナを攻めてもかまわない」と言ったのと同じだ。
 その結果の長期戦である。ロシアを挑発して手を出させたのはいいが、主敵の中国との結束を強めさせ、手に負えない新冷戦を抱え込もうとしている。
 イタリアやテキサスより小さい約1兆5000億ドルのGDPしか持たない国のロシアをなぜ脅威としたのか? 軍事費にいたってはアメリカの10分の1である。
 そんな国のために、アメリカが世界覇権を失い、ドルが基軸通貨から転落するとしたら、その責任は誰がとるのか。
 いまさら、プーチンを狂人に仕立て上げても、手遅れと言えるだろう。
 この間違いを正すには、いますぐ、軍をウクライナに派遣し、ロシアを叩くしか道はない。そうして、力でロシアをねじ伏せ、プーチン政権を壊滅させる。プーチンが核を使ってくるかどうかは神のみぞ知るところだが、このまま長期戦となれば、アメリカの敗色は濃くなる一方となる。

 

円は完全なローカル・カレンシーになる

 新冷戦が進み、世界が「アメリカ欧州ブロック」と、「中ロブロック」に別れた場合を考えると、日本の置かれた立場は本当に危うい。
 もし、中国にも制裁を発動となれば、日本のスーパーの食料品は3分の1がなくなるだろう。中国の製造業に部品を供給していた日本のものづくりは壊滅し、失業者が街にあふれるだろう。ドルが基軸通貨としての力を失うとともに、円は完全なローカル・カレンシーになり、円安は際限なく進むだろう。
 それにしても思うのは、このような最悪シナリオのほうが、いまの日本の報道より、現実味があることだ。たしかに、プーチンは誤算を重ね、ロシアは窮地に陥っている。しかし、長期的に見ると、そうとは言い切れない。
 ただ、いまのムードのなかで、このことを言うのははばかれる。
 ロシアによるウクライナ侵攻の全責任はプーチンにあり、プーチンは卑劣な指導者だ。しかし、だからといって、アメリカが過去30年にわたってやってきたことは免罪されない。それによって、なぜ、私たち日本人まで大変な目に合わなければならないのか。
 いずれにしても、世界がこの先どうなるのかを冷静に見つめ、生活と資産を守っていかねばならない。いま、私たちはその岐路に立たされている。


(了)

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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 


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