啓明学院中学校・高等学校

 

2023秋 教育特集 帰国子女受入校

帰国生入試を行うなど、海外からの帰国生を応援する帰国子女受入校。各校の特徴や帰国子女受け入れの意義、海外経験をもつ生徒の強みなどについて伺いました。

 

啓明学院中学校・高等学校

 

 

―貴校が目指す教育の一つに、「社会起業家精神にあふれたグローバルリーダーを育てる」とありますが、教育において心がけておられることはなんですか?

「ソーシャルアントレプレナーシップ」という言葉があります。「社会起業家精神」つまり「世界が解決を求めている深刻な社会問題をビジネスで解決しようとするマインド」を表す言葉です。後述の本校の様々なチャレンジプログラムは、この精神を育てるために大切なプログラムです。身の周りの社会や世界に目を向けること、自分さえ良ければいい、という自己中心ではなく、他者の幸せを考えることが出来る人になること。ソーシャルアントレプレナーシップを育てることは、本校の教育の大きな目標です。この目標に向けて「知る」「深める」表現する」を柱に、SDGsへの取り組みも活発に行っています。

ソーシャルアントレプレナーを育てる取り組みの1つとして、高校1年次には「ビジネスプランコンテスト」を実施しています。「社会にひそむ課題」を見つけ、「解決策」を探り、「利益を出してビジネス化する」プランを作成し、クラス審査を経て最終審査に臨みます。高校生を対象に大学や民間団体が主催するセミナーやビジネスプランコンテストへ応募する機会を設けています。また、ソーシャルビジネスや起業についての講演会を催しています。

―現在帰国生が91名在籍していますが、帰国生受け入れの歴史と経緯を教えてください。

2002年、関西学院大学継続の中学・高等学校として新たな歩みを始めるタイミングで、帰国生の積極的な受け入れを始めました。本校は国際校を名乗ってはいませんが、現在では、全校生徒の約1割が2年以上の在留経験を有する生徒です。異文化体験をして価値観の多様を受容する力を無意識のうちに身につけている、体験を通しての視野の広さというものが帰国後に熟成して学力の支えとなすこと、異文化適応の力を含むコミュニケーション能力の高さなどの潜在能力をもつ帰国生が、学校の校風に相まってその力を確実なものにすること、さらに他の生徒と触発しあって新しいものを生み出すことを帰国生に期待しています。

―受け入れる帰国生の評価として、重視されていることはなんですか?

帰国生がもつ潜在力、適応を含めたコミュニケーション能力の高さ、異質への寛容さ、積極的な好奇心などを大きな魅力として評価しています。

海外在留体験、異文化体験をもつ皆さんは、日本国内では気づきにくい世界の課題に敏感に反応できる素地を持っていると感じています。日本の当たり前にとらわれず、異質なものへの寛容さ、異なる文化や価値観を受け入れるしなやかさ、コミュニケーション能力やプレゼンテーション能力の高さ、もちろん個人差はありますが、物怖じしない積極性、意識・モチベーションの高さ、そうした潜在的な力を皆さんは持っていると思っています。

皆さんが持っている異文化コミュニケーション体験者としての強みが、様々なことに関わろうとする積極性や好奇心を生み出していると感じています。啓明学院が目指す、ソーシャルアントレプレナーシップを備えた人間に育ってほしいという願いを実現する上で大切な存在です。海外での経験、見聞きしたこと、感じたこと、そういったことが自ずと世界に目を向ける姿勢を生み出すもととなり、世界が抱える諸問題に取り組もうとする問題意識をもつきっかけとなっていると思います。

多様性を持った帰国生の良さを伸ばすために、教育において心がけておられることはなんですか?

帰国生がもつ多様なバイタリティーは国内生にとって大きな影響を与えます。啓明学院の伝統を築いていく上でも、帰国生が大きな財産になると私たちは考えています。啓明学院では、入学後に「帰国生」という枠にはめ込むことはしていません。海外での生活経験がある生徒も、国内で育った生徒も関係なく、それぞれの賜物を磨き、力を伸ばすことに努めています。

ー貴校の卒業生には、どのようなキャリア、人生を過ごしてほしいとお考えですか?

啓明を卒業後、ソーシャルアントレプレナーとして頑張っている卒業生を紹介します。地元神戸元町で食堂経営をしている奥尚子さんです。彼女は、「様々な困難を抱える在日アジア人女性の就労の場を創り出すこと」で、世界に貢献するという夢を持って活動しています。食堂では、アジア各国の女性が自分の価値を認め、腕をふるい、おいしい料理を提供しています。その他にも、経済産業省から復興庁へ出向し、福島県浪江町の町おこしに取り組んだ卒業生もいます。カンボジアでサッカー普及に頑張った卒業生もいました。

本校での学びを生かし、体験と出会いから得たものをきっかけにして、ソーシャルアントレプレナーとして頑張っている卒業生です。

しかし、アントレプレナーにならなくてもいいのです。大事なことは、それぞれが置かれた状況で問題が起きたときに、その問題を解決しようと挑戦する勇気をもつことです。今まであったシステムを変革し、仲間とともに知恵を生みだし、社会をより良い方向に変えていこうとするなら、誰もがソーシャルアントレプレナーシップを発揮したことになります。

―日本での受験を考えておられるこちらの保護者の皆さんに、一言アドバイスをお願いします。

海外でしかできないこと、「今」を充実させてください。その中で、啓明学院に興味を持っていただけたら、少しでも受験を考えようと思ってもらえたなら、ぜひこれまでの海外生活を振り返ってみて下さい。どんな経験をしてきたか、よい思い出もそうでないものも、苦い記憶も、すべてかけがえのない体験の一つ一つですから、それはあなたの宝物です。居心地が良かったり、違和感を感じたりもしたことでしょう。しかし、その居心地の良さや違和感が何から来ているのか、答えは見出せなくても考えてみてください。きっと新たな自分の発見にもつながると思います。

【学校の基本情報】

  • 教育目標
    知的好奇心を育み、神の愛を知り、心身を鍛えるキリスト教主義に基づいた知・徳・体の養成。
    Hands and hearts are trained to serve both man below and God above.
    (手と心は神と人に仕えるために鍛えられる)
    この精神を心に刻み、他人を思いやる心豊かなたくましい人間に成長してほしいと願っている。

  • 生徒数と帰国性の比率
    帰国生…2年以上の海外在留経験を有する者

    中学 一般生徒:帰国子女=512名:23名( 4.5%)
    男子 225名:10名( 4.4%) 
    女子 287名:13名( 4.5%)

    高校 一般生徒:帰国子女=731名:68名( 9.3%)
    男子 308名:25名( 8.1%) 
    女子 423名:43名(10.2%)
    *2023年10月現在

【帰国子女クラスの特徴について】

  • 入学の選考方法として重視する点
    帰国生一人ひとりの学習状況や生活環境などをふまえて総合的に判断する。
    入学後は日本語を活用した学習となるため、日本語運用能力が必要。

  • 入学に求める帰国子女生としての特徴
    何事にもチャレンジしたいという気持ちをもって前向きに取り組む生徒に入学していただきたい。

  • 一般学級との違い
    クラス編成は一般生と混合です。帰国生と国内生は区別することなく、一緒に学習します。

  • 特徴的な授業内容の具体例
    「学術研究」
    高校1年次で欧米の読書技術と文章作法を学ぶ。2年次には教員1名につき15名程度のグループ(大学のゼミのような)をつくり対象文献の「分析読書」を実践。要約や発表、議論を重ねる。3年次には自身の研究テーマに沿って関連情報を集め、12,000字の「学術研究レポート」を作成し、研究発表を行う。

    昨年度の学術研究テーマ(口頭発表者テーマ抜粋)
    ・カントの説いた「国際的な連合」と現実の国際連合の間にある共通点や相違点はどのようなものか
    ・なぜ日本人は周りに合わせるのか
    ・なぜ和算は当時の世界最高水準の数学に成ったのか
    ・How Starbucks Became a Successful Worldwide Business

【カリキュラム、進学先などについて】

  • 選択授業の例や豊富さについて
    高校3年次まで文系・理系に分けないリベラルアーツ型カリキュラムを採用。

    3年次に全員が数学IIIと少なくとも理科1科目を履修する。また、英書講読、法律学、社会学、平和学、国際政治経済など、受験とらわれない多角的で幅広い学びの機会を提供している。

    「土曜講座」1年間で1または2講座を選択。年間10回(各90分)の講座を受講。

    中国語や韓国語、科学実験やドローン体験、セーリングやゴルフなど、50を超える講座の中から選択して受講。関西学院大学の教授による授業や本校を卒業した大学生による講座もある。生徒達は自身の素質・才能を見いだし伸ばすために、また将来の仕事や趣味として豊かに実らせるために、積極的に取り組んでいる。

  • 課外授業の例
    「キャンプ活動」

    大自然の中で野外学習と合宿生活を体験し、生徒と教職員が協働で学ぶ。中学1年・高校1年次に啓明学院前島キャンプでの2泊3日のオリエンテーションキャンプを行う。
    中学2年次には5泊6日の無人島キャンプを行う。1kmの遠泳やテントサイトの草刈りなど仲間と協力して共同生活を送る。
    また、それぞれのキャンプには上級生(中学3年生、高校2年生、3年生)がリーダーとして参加。下級生の安全と健康に目を配り、取り組む姿勢の模範を示す。


    「サマープロジェクト」
    コロナ禍の2021年度から実施している夏季休暇中の活動で、生徒に豊かな体験の場を提供している。今年度は「能登魅力化プロジェクト」、「English Immersion Camp」、「もしも、あなたが裁判員になったら」「アートの島を巡るスケッチ旅行」など、20を超えるプログラムに延べ400名近くの生徒が参加した。
  • 進学先のサポートとして行なっている取り組み
    本校は関西学院大学への推薦進学者が全生徒の90%を超える大学継続校である。

    関西学院大学の先生方による学部説明会や高校3年次の選択科目「法律学」や「社会学」を受講可能。また、高大連携科目履修制度もあり、大学で何を学ぶのかを考える機会が多数ある。関西学院大学での学びを見据えた3年間、6年間となっている。

啓明学院中学校・高等学校

〒654-0131 兵庫県神戸市須磨区横尾9-5-1 
Tel 078-741-1501
https://www.keimei.ed.jp

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