大学生活への適応は、新たな自立や厳しい授業への対応など、いつの時代も難しい。とりわけ、今を生きる学生の多くは新型コロナウイルスの感染拡大を受け、精神衛生上の問題にも直面している。2024年3月の調査では、70%の大学生が入学後にメンタルヘルスで悩んだと回答。大学側に対しても、課題を突き付けている。

USニュースが昨年6月に伝えた記事によれば、ケアする必要性があるにもかかわらず、ほとんどの学生は助けを求めない。メンタルヘルスのリソースを探した人は、37%に過ぎなかった。その背景として「社会的烙印を押されることへの恐れ」や「費用がかかる」などを理由に挙げている。別の調査では、有色人種の学生の方が白人学生よりもケアを求める傾向が強いという。
ケアを求めた理由は、不安や抑うつ、自傷行為や自殺願望、薬物乱用、トラウマなどで、回答者の69%が「(対応が)十分だった」としている。多くの大学はキャンパス内でカウンセリングサービスを提供するなどして学生を支援する態勢を整えている。専門家は、大学が優先すべきこととして「家族や地域の人々のメンタルヘルスに対する意識を高めることに重点を置く必要がある」と指摘。同時に、メンタルヘルスの問題に取り組むことは、大学での学生をサポートするだけでなく、卒業後の生活に備えることにもつながると強調する。
学生の幸福度が高い大学ランキング
2024年8月発行のプリンストンレビュー「大学ランキングリスト」は、全米390校の大学に通う16万8000人の学生を対象に、①学校の学業/運営 ②大学での生活 ③友人 ④自分自身についての4つのセクションに分かれた89の質問を実施。「私は幸せなキャンパスライフを送っています」と答えた学生が最も多かったのは、アラバマ州オーバーンのオーバーン大学だった。トップ10は下記(大学名、所在地、学生数)。
①オーバーン大学(Auburn University)アラバマ州オーバーン 2万7907人
②カンザス州立大学(Kansas State University)カンザス州マンハッタン 1万5650人
③テイラー大学(Taylor University)インディアナ州アップランド 2503人
④ダラス大学(University of Dallas)テキサス州アービング 1427人
⑤トーマス・アクイナス・カレッジ(Thomas Aquinas College)カルフォルニア州サンタポーラ 372人
⑥テキサスキリスト教大学(Texas Christian University)テキサス州フォートワース 1万915人
⑦ワシントン州立大学(Washington State University)ワシントン州パルマン 2万1923人
⑧マリスト大学(Marist University)ニューヨーク州ポケプシー 5545人
⑨エモリー大学(Emory University)ジョージア州アトランタ 7407人
⑩アンジェロ州立大学(Angelo State University)テキサス州サンアンジェロ 9779人
編集部のつぶやき
国務省の招きを受け、インターナショナル・ビジター・リーダーシップ・プログラム(IVLP)に参加したのは、2015年初夏でした。3週間かけて全米を回りました。多くを学び、吸収したのは言うまでもありませんが、本記事で扱ったメンタルヘルスを巡る日本との認識相違に驚いたのを思い出します。
多くのエグゼクティブが、自分専門のカウンセラーやコーチを付けていること。メンタルヘルスに対する社会的包摂、理解が広がっていること。当時の日本とは様相が大きく異なっていました。アメリカで成功した事業モデルはいずれ日本でも導入される「タイムマシン経営」の如く、日本でも少しずつメンタルヘルスに対する周囲の目線は低くなっていると感じます。
コロナ最中の2020年12月、デイリーサン・ニューヨークのスタッフライターとして加わり、翌春の帰国後も記事執筆・編集を続けてきましたが、この記事が最後になります。読者の皆様、4年3カ月もの長い間、大変お世話になりました。
この間アメリカも大きく変わりました。向こう4年間の動向はまったく見通せないのが実情でしょう。アメリカの影響を大きく受ける日本の行く末も不透明です。2カ月ごとに発行する紙面版の連載記事「小西一禎の日米見聞録」で、太平洋を挟んだ両国が直面する現状や課題について、引き続きお伝えします。(KAZUYOSHI KONISHI)
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