ブロンクス動物園で長年暮らしてきたアジアゾウのハッピーが26日、55歳で安楽死した。ハッピーは並外れた知性から、人間と同様の基本的人権を有するかどうかを巡る異例の法廷闘争に巻き込まれていた。ニューヨークタイムズが28日、伝えた。

動物園側によると、ハッピーは近年、加齢に伴う体調悪化が進み、腎臓または肝臓の機能低下も見られたため、ホスピスケアを受けていた。継続的な健康状態と生活の質の評価を踏まえ、これ以上の回復が難しいと判断されたという。
テストで高い自己認識能力を示す
ハッピーは1977年から同園で暮らし、2005年には鏡に映った自分を認識する「ミラーテスト」に合格したことで注目を集めた。鏡を見ながら頭につけられた印に鼻で触れた行動は、高い自己認識能力を示すものとされ、当時、ゾウとして初めての例とされた。人間の幼児や類人猿、イルカなどに限られると考えられてきた能力を示したことで、ハッピーは単なる人気動物ではなく、動物の知性を考える象徴的な存在となった。
「動物園から保護区へ」法定闘争始まる
この事実を背景に動物権利保護団体ノンヒューマン・ライツ・プロジェクトは18年、ハッピーを動物園から保護区へ移すべきだとして法廷闘争を始めた。同団体は、人が不当な拘束から自由を求める際に使う「人身保護令状」の考え方を、ゾウのように自律性と高度な認知能力を持つ動物にも認めるべきだと主張。過去にチンパンジーでも同様の訴えを起こしていたが、ハッピーの件は、高位の裁判所まで進んだ英語圏で初めての事例とされている。
ニューヨーク州最高裁判所は4年前、5対2で「ハッピーが動物園に違法に収容されており、ゾウの保護施設に移すべきだ」とする主張を退けていた。動物園側は、ハッピーは適切に世話されており、訴訟は根拠に乏しいと反論していた。一方で、反対意見を出した判事もおり、動物の法的権利を巡る議論は社会に大きな問いを残した。
ノンヒューマン・ライツ・プロジェクトのクリストファー・ベリー事務局長は28日の声明で、「ハッピーの苦しみは無駄にはならない」と述べた。「ハッピーは、動物の法的権利のために法廷の扉を開いたゾウとして、いつまでも人々の記憶に残るでしょう」
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