アメリカの空港の保安検査といえば、厳しい荷物検査や長蛇の列、高飛車な職員など好ましくない印象を持つ旅行者も少なくない。近年は人員不足などによる混乱も話題となった。一方、米運輸保安庁(TSA)には、保安検査で追加支援が必要な旅行者向けに専門スタッフがサポートする無料サービス「TSA Cares」があることはあまり知られていない。ここではその内容を紹介する。

TSA Caresの目的と対象
TSA Caresでは、「Passenger Support Specialist(PSS)」と呼ばれる専門訓練を受けたTSA職員が支援を担当する。PSSは、障害や既往症のある人への接し方やコミュニケーション方法について特別な教育を受けており、保安検査の流れを事前に説明したり、必要に応じて個別検査を調整したりする。利用者が安心して検査を受けられるようサポートするのが目的だ。対象者は下記。
・高齢者・障害のある人
・3.4オンスを超える医療用液体やジェル類を携行する人
・医療機器や義足、人工関節、CPAP装置などを利用している人
・車椅子・歩行補助具を使用している人
・がん、糖尿病、心疾患など持病がある人
・自閉症、不安障害、PTSDなど精神・感覚面への配慮が必要な人
・サービスアニマル同伴の旅行者
・障害や医療上の配慮が必要な子どもと旅行する家族
・英語での会話や案内理解に不安がある人
・初めて飛行機を利用する人
・宗教・文化的理由で特別な取り扱いが必要な衣装を身に着けたり祭具を携行したりする場合
・遺灰を携行する場合
利用方法
希望者は、出発72時間前までにTSA Cares専用フォーム、または電話(855-787-2227)で申請することが推奨されている。申請時には、「搭乗便名、利用航空会社、出発日時、必要な支援内容」などを伝える必要がある。直前の場合でも電話申請は可能で、空港到着後にTSA係員に直接、PSSを依頼できるが、混雑状況によっては待ち時間が発生する場合がある。
車椅子サービスとは別制度
車椅子サービスは航空会社が提供し、チェックインカウンターから搭乗口までの移動補助などを担う。一方、TSA Caresは保安検査時の案内やコミュニケーション支援を行う制度で、専門訓練を受けたTSA職員(PSS)が対応する。
車椅子スタッフは移動補助の担当であり、保安検査の権限は持たないため、検査場では「移動を支援するスタッフ」と「検査をサポートするTSA職員」の双方が必要となるケースもあるという。
「PreCheck」との違いは?
TSAには有料プログラム「TSA PreCheck」もあるが、こちらは目的が異なる。PreCheckは、事前審査を受けた利用者向けに専用レーンを提供し、靴やベルトを外さずに検査を受けられるなど、通過時間を短縮する制度。利用には申請料(通常75〜85ドル)や身元審査が必要となる。

TSA Caresはスピードではなく「支援」を目的とした無料制度で、航空会社に関係なく利用できる。事前審査や会員登録、長期契約などは不要で、利用者の状況に応じた個別対応が特徴。家族や介助者への案内も行われる。TSAは「必要な支援内容を事前に知らせてもらうことで、よりスムーズな保安検査につながる」としている。
文・写真/Miki Takeda
RECOMMENDED
-

客室乗務員が教える「本当に快適な座席」とは? プロが選ぶベストシートの理由
-

NYの「1日の生活費」が桁違い、普通に過ごして7万円…ローカル住人が検証
-

ベテラン客室乗務員が教える「機内での迷惑行為」、食事サービス中のヘッドホンにも注意?
-

パスポートは必ず手元に、飛行機の旅で「意外と多い落とし穴」をチェック
-

日本帰省マストバイ!NY在住者が選んだ「食品土産まとめ」、ご当地&調味料が人気
-

機内配布のブランケットは不衛生かも…キレイなものとの「見分け方」は? 客室乗務員はマイ毛布持参をおすすめ
-

白づくめの4000人がNYに集結、世界を席巻する「謎のピクニック」を知ってる?
-

長距離フライト、いつトイレに行くのがベスト? 客室乗務員がすすめる最適なタイミング
-

機内Wi-Fiが最も速い航空会社はどこ? 1位は「ハワイアン航空」、JALとANAは?
-

「安い日本」はもう終わり? 外国人観光客に迫る値上げラッシュ、テーマパークや富士山まで









