2026年5月29日 NEWS DAILY CONTENTS

駐妻の6割が「本当は働きたい」、キャリアを諦めたくない女性たちのリアル

夫(妻)の海外赴任に帯同して海外に住む。その際に、日本で積み上げたキャリアを手放す選択をせざるを得ない人も多い。海外に住み始めた後も、英語の壁がある中、生活の立ち上げ、子育てや家事や家族のサポートに日々を追われる。ニューヨーク在住の駐在帯同妻(通称:駐妻)たちが日々どう過ごし、キャリア中断についてどんな思いを抱いているのか。その実態を調査すべく本紙でアンケートを実施した。

キャリアを中断し、異国の地で一から仕事を探すのは大変(photo: AIで作成 )

駐在帯同とキャリアについて
アンケート結果

Q1. 駐在帯同中の過ごし方は?(509票)

「子育て家事などで忙しい」が断トツの44%を占める一方、学びや趣味に時間を充てている人も25%いる。就労にとどまらず、海外生活を自分なりに生かそうとする姿勢も見えてくる。実際に仕事をしている・就労予定と答えたのは23%にとどまり、就労している駐妻(夫)は少数派だ。

Q2. 駐在帯同中の仕事について(409票)

「仕事をしている・していた」と「あればしたい・したかった」を合わせると63%と、6割以上が就労に前向きな姿勢を持っていることが分かる。一方、「しなくてもいい」が29%と約3割を占め、働くことへの考え方は人それぞれだ。帯同中の過ごし方の正解は一つではないことも分かる。

Q3. 就労にあたっての弊害はありましたか?(299票)

最も多かったのは「家庭との両立の難しさ」で45%。次いで「夫(妻)の会社都合・年収制限」が28%と、働く意欲があっても環境や制度の壁に阻まれている実態が見える。「その他」には、ビザの問題、語学の壁など働きたい気持ちだけでは越えられないハードルが、まだ多く存在しているといえる。

渡米4カ月目で見つけたやりがい」
モデルケース Aさん(28歳)

6割以上が就労に前向きな一方、家庭との両立や制度の壁に阻まれているのが現実だ。「最初は葛藤もあった」と打ち明けながらも、来米3カ月で動き出し、4カ月目にジェトロ・ニューヨーク事務所での就職を掴んだ駐妻Aさん(28歳・夫婦二人暮らし)に話を聞いた。

ラスベガスで開催された「CES 2026」Japanパビリオンでブース運営サポートを行うAさん(photo: 本人提供)

——ニューヨークに来たのはいつ頃ですか?

2025年3月です。ちょうど1年ほど経ちました。それまでは日本でメーカー企業に勤めていて、そこで広報を5年ほど担当していました。夫の赴任に帯同する際、その会社は休職制度が整っていなかったので、退職するという形になりました。

——最初はどんな生活でしたか?

私が住んでいるのはニューヨークの郊外で、マンハッタンに気軽に遊びに行けるような場所ではないため、平日は自然と家で過ごす時間が多い生活でした。

アメリカに来たからには何かしたい、という気持ちはずっとありました。とはいえ、すぐに行動に移せるものが見つかるわけでもなく、オンライン英会話や関心のある分野の通信講座を受けたり、「これから何に挑戦しようか」とネットサーフィンをしながら模索する日々が3カ月ほど続きました。

駐在期間は長いようで、きっとあっという間に過ぎてしまう。もともとのんびりしていられない性格もあって、「今これをやっています」と言える何かがないといけない、という焦りが正直ありました。

——その後、就職活動はどのように進めたのですか?

最初は働くことへのハードルがとても高いと感じていました。それに、夫を支えるために帯同している中で、自分が働くことがどのように影響するのか少し不安に感じることもありました。

そのため、最初は就職に踏み出すというよりは、無給のインターンを探したりボランティアに参加したりと、働く以外の選択肢にも目を向けてみることにしました。

ボランティアは2つ参加しました。一つは家の近くで不要になった絵本を集めてフリーマーケットで販売するための活動。もう一つはブルックリンの団体で、花屋さんで売れ残った花をブーケにリサイクルして、病院や老人ホームなど外出が難しい方々にお届けするというものです。それはとても楽しかったですね。

そんなことをしながら、実際に自分が働くためにはどんな準備や条件が必要なのかも、少しずつ調べていきました。最終的にはエージェントを通じていくつかの企業を受けた中で、仕事の内容と働き方を考えてジェトロ・ニューヨーク事務所で働くことになりました。

派遣社員として期間が区切られているジェトロの働き方は、私にとって無理なく始めやすいものでした。まずはやってみようと思えたことが大きかったです。

——ジェトロ・ニューヨーク事務所では、どんな仕事をしていますか?

日本のスタートアップ企業のアメリカ進出支援が主な仕事です。アメリカでビジネスを展開したい起業家向けに育成プログラムを運営したり、展示会への出展サポートをしたりしています。ニューヨークだけでなく、ボストンやラスベガスなど各地で行われるイベントに出張することもあります。

もともと海外で働くことは私の夢でもあったので、現地のビジネス文化に触れ、日本との違いを実感できる日々はとても新鮮でやりがいを感じています。

――就職してからの1週間の過ごし方は?

週3日出勤、週2日在宅勤務です。勤務時間は午前9時から午後5時が基本で、残業はイベントがあるときくらいです。帰宅後は、夕食と翌日のお弁当を作って、夫と食卓を囲み、その後は好きなことをして過ごしています。

家事と仕事どちらもしっかり向き合いたいという気持ちはありますが、仕事を始めたことで何かできなくなったと感じることはありません。

——働き始めてから、気持ちの変化はありましたか?

大きく変わりました。来た当初は、アメリカで生き生きと働く周りの人たちを見て、焦りや少しの劣等感を感じることもありました。

今は、毎日行く場所があり、そこで自分を頼ってくれる人がいる——それだけで、異国の地でも自分もこの場所の一員として生きているという実感があります。最近は家でも仕事の話をすることが増え、夫からも楽しそうだと言われるようになりました。

帰国後のキャリアへの不安も、以前と比べてだいぶ軽くなりました。「今これをやっている」と言えるものがあることは、想像以上に大きな充実感につながっています。

——最後に、キャリアに悩む駐妻の皆さんへメッセージをお願いします

家族の状況や帯同の制度も人によってさまざまなので、働くことが必ずしもベストな選択だとは思っていません。ただ、帯同期間をキャリアの空白期間だと感じて不安になることがあれば、これまで時間が取れなくてできなかった勉強やボランティアに挑戦してみたり、現地の方と積極的に話して英語を身に付けたりと、いろいろな選択肢を探してみて一歩踏み出してみるのもいいのかなと思います。

私自身も、ニューヨークにいるからこそ挑戦できる何かを見つけて、この期間を「自分なりに意味のある時間だった」と思えるような経験を、これからも増やしていきたいと思っています。

取材・文/藤原ミナ

                       
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