SNSやAI技術の進化によって今、「スロップ(slop)」と呼ばれる中身のない大量のコンテンツが日常を覆っている。スロップは、トランプ大統領を教皇に加工した写真やジャガイモをフライパンで揚げる猫など、AIが生成する違和感のある画像や、短時間で消費される動画、栄養や味より効率を重視した「スロップボウル」と呼ばれるランチ、ファストファッションなどに形を変えて私たちに迫ってくる。19日付のニューヨークタイムズが「スロップ化する日常」について警鐘を鳴らしている。

スロップボウルとは、Cava、NAYA、Sweetgreen、Choptなどのファスト・カジュアルレストランで提供される、曖昧な素材の混合物を指す言葉。一日を少しでも効率化するために設計された食事だ。SheinやTemuをはじめとするファストファッション・ブランドは、服を非常に安く販売しているため、オンライン注文の魅力を「新しい服」ではなく「服の絶え間ない補充」のように感じさせる。
経済評論家のカイラ・スカンモンさんは、さまざまな種類の消費(食事、服装、投稿など)において、人々は、その結果が多少表現力に欠け(皆と同じ服装)、満足度が多少低下(昨日のランチとまったく同じ味)、あるいは人間味が多少失われるとしても、思考を最小限に抑え、効率を最大限に高めることを選択していると憂慮する。スカンモンさんにとってスロップとは、「膨大な量の不要な物、つまり、ごみ箱行きのために作られたような服が蓄積されたものだ」という。カリフォルニア大学ロサンゼルス校のダニエル・カー助教は、スロップを、「不気味なほど人間的ではない美学を表し、人々に現実感の喪失感を与えるもの。自分自身や他の人々の現実性に対する信念を喪失させるもの」と定義する。
AI スロップが私たちの心に与える影響についてM.I.T. メディアラボが 55人の学生の脳活動を調査した研究では、ChatGPT を使用してタスクを完了した学生は、注意力が大幅に低下していることが分かった。スタンフォード大学の神経科学者アンソニー・ワグナーさんは、マルチタスクが注意力と記憶に与える影響に関する10年間の研究をレビューし、オンラインとオフラインの情報を頻繁に切り替える人は、記憶タスクの成績が劣ることを発見。一部の精神科医は、「オンラインの低品質コンテンツに絶え間なくさらされると、認知機能の低下を引き起こす」と指摘している。
インディアナ大学の社会学者、アン・カヴァルチェクさんは、スロップを「中身のないお粥のようなもの」と表現。粗悪なAI コンテンツに遭遇するのを避けるため昨年、スマートフォンからインスタグラムを削除した。一部の人々の間ではスロップから距離を置く「脱インフルエンサー」運動も始まっている。
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