2026年5月1日 NEWS DAILY CONTENTS

なぜあなたはNYに? 日本人ニューヨーカーに聞く「10の質問」No.5 若き映画監督 川邊出雲

若干20歳ながらつい先日、カンヌ国際映画祭の若手クリエイター育成プログラム「Cinéma de Demain」に挑戦。自身の経験に基づいたドキュメンタリーフィクション「Mother’s Recipe」で世界から注目を集めた映画監督、川邊出雲さん。幼少期からiPadを使ってストップモーションアニメを作るなど、”作ること”には潜在的な興味があったといい、ついに夢の街ニューヨークへ。

「映画を作るってお祭り的な感じがあって、大好き」と語る、彼の映画作りに込める思い、また映画の代名詞ともいえるハリウッドではなく、あえてニューヨークを選んだ理由など、10の質問で探っていく。

Q1. 職業は?

映画監督です。

Q2. ニューヨークに来たのはいつ?

2024年秋に来て、約1年半が経ちました。

幼い頃から作ることに対して強い興味があったという(photo: 本人提供)

Q3. 何をきっかけに?

ニューヨーク大学(NYU)入学のためです。

Q4.なぜニューヨーク?

もともと小さい頃からアートが好きで、3歳くらいからずっと絵を描いていました。両親が建築家ということもあり、「仮面ライダーのベルトが欲しい」と言っても「自分で作れ」と返ってるなど(笑)、作ることの大切さは当時から理解していました。

幼少期の川邊さん。既にパソコンを使いながらアニメーションを作っていた(photo: 本人提供)

9歳でストップモーションアニメを作り、ボイスオーバーをしたり動かしたりして遊んでいて。そこからYouTubeの時代が来て、ゲームチャンネルをやったりしながら・・・学校では映画クラブを作って映画をどんどん撮るようになり、そのあたりから自分もプロとしてやりたいという気持ちが芽生えてきて、ニューヨークに来ました。

そして当時から「映画を学ぶならアメリカ」と、ずっとアメリカの映画学校に行きたいと思っていて、まずは数年前にハリウッドの映画学校のサマーキャンプに参加したんです。その時に初めてハリウッドの雰囲気を体感したのですが、映画業界で働ける人材を育てているような印象があって、どこか”教科書的”だと感じてしまったんです。

「映画はコラボレーションでしか成り立たない」(photo: 本人提供)

その後ニューヨークに来てみて、この街の活気や「自分で何かをやろう」とする人たちのインディースピリット、そして何よりニューヨーク大学が自分に合っていたので、高校の最後はそれだけを考えて勉強していました。

Q5.ニューヨークでの挑戦で、一番心が折れそうになった出来事は?

カンヌ国際映画祭の学生プログラムでファイナリストに選ばれていたのですが、インタビューなどを乗り越えて最後に映画を観てもらったんですが、「いやぁ違うな」と言われた時は心が折れましたね(笑)。

今はその時に撮った短編をさらに半分にしたりと、作ったものを壊して、一から構築することをやっています。リスクを取ってゼロから始めてみようというステージです。

若干20歳ながら多彩な活躍を見せる(photo: 本人提供)

Q6.またニューヨークで心を救われた経験や一番うれしかった出来事は?

20分ほどの短編が完成した時に、夜の学校に友達が40人くらい集まってくれて、小さな上映会をしたんです。そこで「感動したよ」「泣いた」「共感したよ」といったさまざまな声をかけてもらえたのは、とてもうれしかったですね。

ショートフィルム「Mother’s Recipe」は「Short Shorts Film Festival & Asia」でベスト・ショート・アワードも受賞

映画自体も、自分が日本から家族の仕事の都合でシンガポールに移住して感じたことがテーマだったので、ニューヨークで挑戦する友達には共感する部分があったようで、そういう声を聞くと「ああ、このためにやっているんだ」と改めて感じます。観てもらった人にどれだけ感動してもらえるかは、自分の映画作りのコアにあるものなので、この経験は初心に帰るような気持ちで、うれしかったですね。

Q7.座右の銘は?

早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け。

映画仲間と撮影に励む様子(photo: 本人提供)

Q8.今の夢は?

直近の夢としては、長編を完成させたいですね。この夏は自分のことに集中して脚本を書き、今年の後半からは資金集めにも取り組んでいきたいです。

長期的な夢としては、なるべく遠い将来のことは考えすぎないようにしているのですが、「監督」としてしっかりやっていきたいです。たとえば技術職であれば比較的早く食べていけるかもしれませんが、自分はそうではなく、監督としてやりたいという思いがあります。大きな舞台で作品を撮り、映画祭に出し、より多くの人に観てもらいたい。今やっていることをさらに大きくしていきたいですね。

川邊さんが通うNYUには映画撮影のための専用部屋が設けられている

Q9.幼少期、夢を見ていた自分に声をかけるなら?

子どもの頃の自分に一言かけるチャンスがあったとしても、たぶん何も言わないと思います。映画のことも知らないし、英語も話せない10年前の自分に、「20歳になったらニューヨークで映画を作っているよ」って言っても、絶対信じないだろうなって。これまで良いことも壁にぶつかることもあって、今の自分があると思うので、何も伝えなくていいかなと。

幼い頃からアートに触れてきた(photo: 本人提供)

でも、強いていうなら、作品を一人のために作るのも大事ということを伝えるかもしれないです。プロを目指すということは、自分が大切にしていることを表現しながら、同時に観ている人のことも考えて作る必要がある。でもその前に、まず特定の一人に向けて作るという経験をもっとしてみるのもいいんじゃないかなと、今は思っています。

Q10. ニューヨークで一番お気に入りの時間の過ごし方を教えてください。

公園のベンチに座って映画を観ること。短編映画を毎日1本観ることですかね。

柔らかな笑顔が魅力(photo: 本人提供)

Izumo’s ニューヨークのおすすめスポット

ジャズクラブ Dizzy’s Club
「ジャズが好きで、リンカーセンターの中にあるこのジャズクラブにはよく行きます」

川邊出雲(Kawabe Izumo)

@izumo.kawabe

取材・文・写真/ナガタミユ

                       
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